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インタビュー連載「教えて先生!」
教務部長 佐藤克行先生 編(其の弐)

インタビュアー:​令和五年度 PTA「緑会」会長 植田敦

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この学校のスローガンである「自ら考え行動する人」を実現するために。。。

―ここまでは先生の教育論や昔のお話を伺ってきたんですが、
次は神大附属を受験しようと思っている受験生とそのご家族に伝えたいことはありますでしょうか?

 

はい。神大附属は来年40周年を迎えますが、この学校のスローガンである「自ら考え行動する人」を実現するために、生徒の自主性に任せるという場面が非常に多いです。
例えば、学校生活の中で、授業以外に、「部活を頑張りたい」のか、「委員会活動を頑張りたい」のか、「もっと勉強がしたい」のかを、本人の希望を尊重し、自分で決定したらその決断を自分で責任をもって実行する。

これは学年の活動や、体育祭、くすのき祭(文化祭)、各行事についても同じことが言えます。
自習室もできたので、部活が終わった後にも勉強をして帰れる環境も整いました。
自分が「これなら頑張ってみよう」ということに集中できるように学校は様々な選択肢を用意しています。
海外研修でも、ただ行って終わりではなく、帰ってきてからも海外研修で学んだことを「継続」して実践できるように、学校外の企業さんとのコラボなどもして、それを「くすのき祭」で発表しています。

ーありがとうございます。この学校は東大を目指す生徒もいますし、勉強が得意じゃなくても、学校生活の中で何か好きなことを見つけ、早い段階で起業した卒業生など、多種多様な例がありますよね。

それでは在校生の親御さんに伝えたいことはありますでしょうか?

 

そうですね、在校生の保護者の方には、子供の成長にプラスに働かないと思われるようなことがよくありますので、そこは注意していただければと思いますね。
お子さんの成長で大事なキーワードにはだいたい「自立」という言葉が使われると思うんですが、その名の通り「独り立ちさせる」っていうことだと思うんですよね。
でも、保護者の方の中には、お子さんを過度に監視、干渉する方が少なからずいらっしゃいます。

私は物理の教師で、量子力学が専門なんですが、量子力学では、物質に触らなくても、誰かが観察するだけで、その物質が変化してしまうということを基礎で学ぶんです。

観察者効果ってやつですね。二重スリット実験とかの話で出てくる。
観察するという行為が、観察される現象に変化を与えてしまうというやつですね。

そうです、そうです。これはこの世界を形作っている物理の基本ルールですので、この干渉がどれだけ子供の自立を阻害するかはぜひ理解していただきたいと思っているんです。

中学入学時は仕方ないとしても、高校に入ったら、お子さんを遠くから見守ってほしいと思うんですよ。
口を出したくなるのはよくわかります。でも、お子さんを信じて我慢して見守ってあげてほしいんです。

その例で結構衝撃的だと思うのですが、私の時代とは違って、今の大学受験の会場に保護者控室をつくる学校があるんですよ。

―先生、社会人はもっとひどいですよ。
私の知り合いの会社経営者たちで、2か月に1回集まって食事会をしてるんですが、この2年くらいでよく話に上がるのが、「入社式に親が行っていいか」と会社に問い合わせがくる、という話題なんです。そういう親を持つ新入社員に限って、何も自発的に動けない子なんです。

自転車の補助輪を外したのに、親が自転車を支えてあげてる状態になっていないか

そこまでの話は初めて私も聞きました。非常に由々しき事態になってますね。
ブラジルにピダハンという少数部族がいるんですが、この部族では子供のころから大人扱いなんですよ。

ピダハンて、確か、数や色を区別する言語がなくて、未来や過去形の言葉もない部族ですよね。でもブータンみたいに、世界一幸せって言われている人たちって言われてますね。

そうです、そのピダハン族です。本で読んだんですが、3歳の子がナイフを振り回しているのをお母さんが見てどうしたと思います?

ー普通なら取り上げますよね、「危ない」って。

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そうですよね。でもそのお母さんは、全く気にも留めないで、その子が振り回しすぎてナイフを落としたら、
拾ってまたその子にナイフを渡しちゃうんですって。

えー。私たちの常識で考えたらちょっと怖いですね。

 

そうですよね。これは文化なので単純ないい悪いで判断できないですが、私も3歳にナイフは確かに危ないと思います。
でも、先ほどの入社式の親の話を聞くと、日本も同じように危ないと思うんですよ。手をかけすぎるっていうのは、子供の成長にいい影響は与えないと思うんですよ。

ーそうですよね。「木の上に立って遠くから子供を見る」というのが、「親」という漢字だってよく言われますもんね。

それに、失敗をさせないようにする保護者の方も多い気がします。お子さんの先回りをして、失敗がないように注意してしまう。
自転車の補助輪を外したのに、親が自転車を支えてあげてる状態ですね。
それだといつまでたっても自分で自転車に乗れない。つまり、結局は過干渉ということなんですが、子供が自分で考えることをしなくなってしまうんですよね。

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「見守る」という距離感を大事に考えてほしい

よくわかります。それにこわいのは、これもよく言われることですが、「うちは違う」って気づいていない親が一番危ないって。

そうなんですよね。そういう自分で気づくことをできるようにするためにも、失敗や自立が重要なんですけどね。
でも、今は保護者の方にあえて苦言のようなことを申し上げたんですが、
これは私自身にもいつも言い聞かせていることなんです。

単純に公式を教えて問題を解けるようにすることは、神大附属に入ってくる子のレベルならそう難しくはないことなんです。
でもそれは、この問題を見たらこの公式を当てはめるっていう、何も考えない子を育てるっていう、同じことになるんです。


我々教員というのは、社会に出たら忘れてしまう公式をたくさん覚えさせることが目的なのではなく、
自分で考える力を身に着けさせ、たとえ一時間違っても、失敗したとしても、最終的にゴールにたどり着けばいいということを生徒にちゃんと理解してもらうことが重要だと考えているんです。
だから、ご家庭でもぜひ「見守る」という”距離感”を大事に考えてほしいと思います。

佐藤先生がおっしゃった、「子供との距離感」というお話は、他の先生方から多く聞くお話で、「この10年で親が干渉する傾向が特に増えている」と、ある先生はおっしゃっていました。
佐藤先生のお話を伺って、私たち保護者もこれらを自分事と捉えて、子供の成長を妨げないようにと改めて感じました。

次回は、一転話は変わり、「物理学から解く遠距離恋愛の法則」という佐藤先生の面白いお話をしていただきますのでぜひ読んでいただければと思います。

神奈川大学附属中・高等学校  PTA緑会

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